第29回「安全管理マーク審議会」報告 開催日:平成23年6月23日(木)
会場:東京文具工業健保会館 第2・第3会議室

1. 試買品テスト報告

平成22年度 安全管理マーク商品テスト報告書に沿って、赤井委員より、
1.テストの目的
2.試験項目及び試験方法
3.試験検査機関(指定機関)
4.資料数
5.資料購入期間
6.有害物質試験
7.硬さ試験
8.移行性試験および
9.消し能力試験について
  説明(併せて、JIS S 6050の規格書も参照)があり、
  その結果として、提出サンプルがすべての試験項目の規定に適合していた旨の報告があった。
 なお、上記試験及び結果の補足説明として、

〈1〉 6.の有害物質試験については、EN-71のPart-3の基準を用いている。有害物質試験規格値に対して、それぞれ10分の1以下の検出限界を適応しており、すべての数値が規格値の10分の1以下となっている。
〈2〉 移行性試験については、No.1とNo.3の資料が規格の幅である15mm以上がとれなかったため、それぞれ試験片幅については13mm及び12mmで実施したことを報告書に明記。


使用・消費者側委員より、「移行性の試験方法について」の質問があり、赤井委員より「安全管理マーク規定の5頁の6.4移行性の試験方法として規定されている」と報告があった。更に、工業会側から「プラスチック字消しは、主に塩化ビニル樹脂が原材料となっていて、塩化ビニル樹脂を柔らかくするのに可塑剤を用いる。この可塑剤がくせ者で、字消しの表面に滲み出て、その表面に浮き上がった可塑剤が接触している相手に乗り移って行く現象を移行という。接触した相手が鉛筆だと鉛筆の塗料を溶かし、相手が電卓だと接触していた部分がべたついた状態になることを経験されたことがあるかも知れない。それを防ぐために、字消しには必ず巻紙というのが付いている。また、その巻紙には、“使った後はこのケースに入れてしまいましょう”と云う注意書きが書かれている。字消しによって、移行のし易さ、し難さがいろいろあるので、この試験では、どれだけ移行し難いかと云うことを鉛筆の塗料で調べている」と説明があった。

2. CPSCによる子供製品に含まれる鉛等の規制概要

赤井委員より、資料「CPSCによる子供製品に含まれる鉛等の規制概要:平成23年2月14日付け財団法人日本文化用品安全試験所殿作成資料」を用いて、講話があった。
なお、上記講話のポイントとして、
〈1〉 子供製品に含まれる鉛含有量については、今後、技術的に可能ならば、上限値を現状の300ppmから100ppmに引き下げる。
〈2〉 子供用おもちゃ、育児用品中の特定フタル酸エステル、いわゆる環境ホルモンと呼ばれているもので、登録機関での試験が必要となるが、本来ならば2010年2月10日に開始予定であったが、延期され、現在未定となっている。上記事項の確認時点は、平成23年2月14日ではあるが、その後の状況について確認がとれていない。

工業会側から、特定フタル酸エステルに関して、「字消工業会のメンバー達は、それぞれ輸出する国によって、それぞれの規制に対して大丈夫なようにしている。特に、ヨーロッパや台湾に出すものについては、塩ビの消しゴムをなるべく止めて、非塩ビにするようにしたり、いろいろやっている。環境ホルモン様物質については、なかなか我々が判断できないところであり、我々はその結果を待っているところです」と報告があった。

3. 塩ビ・非塩ビの表示について

使用・消費者側委員より、「塩ビ、非塩ビの表示に関し、非塩ビって云うのは塩ビじゃないという意味か。とすると、塩ビの場合は主原料として塩ビ樹脂を使っていると思うが、非塩ビについては、多種多様な物質が使われるということか」との質問があり、工業会側から「塩ビを主原料にした字消しを“塩ビ”と云い、以前のように生ゴムを使ったものを非塩ビと称しているメーカーもありますし、或いは主原料の塩ビを塩ビ以外のプラスチックに変えたものを非塩ビと称しているものもあります」との見解が示された。

4. EN-71のpart3の有害物質(8元素)について

使用・消費者側委員より、「有害物質として、8元素以外に試験をしなければならないものとして候補に挙がっているはどんなものがあるのか」との質問に対して、赤井委員より「欧州の方で増やす方向で検討していると聞いている」との回答があった。更に工業会側から「日本でも、昭和57年に消しゴムに重金属が含まれていたとのことで非常に大きな問題となったが、その原因は消しゴムに着色するために使用されていた顔料にあった」並びに「体質顔料と呼ばれるものは、天然の鉱物から採るので、規制値を超えるものがあった」との報告があった。

5. 放射線の測定について

赤井委員により、資料「当財団の東京営業所は放射線の測定業務の一部を開始しました:平成23年6月1日付け財団法人日本文化用品安全試験所殿作成資料」を参照しての講話があった。

使用・消費者側委員より、「放射線を測定するというようなケースが、実際、消しゴムについてなかったのか」との質問に関し、工業会側から「天然の岩石を砕いたものを材料としているので、その中に放射性物質が入る可能性は否定できないが、測定しているかどうかは不明である。私見として、原料としては含まれていないと思うので、製品としての消しゴム中にはないと思っていただいていいのではないと考える」との見解を示す一方、使用・消費者側委員より「消しゴムとして輸出する際に検査を要求されたことはないか」との質問に関し、工業会側は、「少なくとも関西(大阪又は神戸)から出るコンテナでそのような経験はない」との報告があった。この輸出の検査の件について、宮村委員より「風評被害つきまして、非常に皆様方にご迷惑をお掛けしておりましたが、輸出証明書の発行に関し、経済産業省では、5月の段階で、放射能の測定ができるところを募集いたしました。つい先日の6月17日にその検査機関十数カ所を指名致しましたので、そこで検査をして貰い検査証明書があれば、諸外国どこに行きまして通関となる状況です」との報告があった。

6. 現在検討中の水銀の規制に関して

使用・消費者側委員より、「字消しの安全管理マーク規定の“3.製品中に含まれる有害物質”に水銀が規定されているが、今年の2月に国際的な水銀条約に関する会議が行われました。日本では水俣条約とも呼んでいますが、今後、水銀を世界的にストップするための条約の検討会を行っているところです。消しゴムに入っているようですが、今後、水銀が使えなくなる可能性があります。消しゴム自身に水銀をどうしても使う必要があるのでしょうか」との質問に関し、工業会側から「必要はありません。これは、わざわざ水銀を入れていると云うことでなく、原料に不純物として混ざっていたり、或いは製造工程で誤って混入した場合を想定して設けられたものです」との回答があり、再度同使用・消費者側委員より「絵画作家が作品に判を押す時に使用する高級な朱肉には水銀が入っている。こう云うものも今後、水銀が使えなくなるということで、これをどのように取り扱うかということを具体的に検討している最中です。ここに水銀とあったので、もしそういうのがありますればと云うことで、話をさせていただきました。使う必要がないとのことでしたら問題はありません。一方、この度の試験機関が出しました製品の検査結果の水銀の項をみますと5以下と書いてあります。5以下と書いてあるのは1か、2かということにもなります。使わないのであれば、ゼロの方がいいのではないかと思います」との見解が示され、工業会側から「先にも話がありましたように、現在の検査方法では規制値以下であれば適合となっているので、その規制値の10分の1の検出限界で評価を実施しているが、今の話のように水銀をゼロにしなさいと云う議論の場合は、その基準に則した対応が必要になってくると考える」との見解が示された。

7. 消しゴムの形状について

使用・消費者側委員より「消しゴムの形状に関してJISと安全管理マーク規定では規定が異なるが、JISで規定されない形状、例えば、子供が喜ぶようなキャラクターとか食品の形状の消しゴムというのは市場で多く流通しているか」との質問について、工業会側は「四角の普通の消しゴムよりも、いろんな形状のものの方が数から云うと多いと思う。ところで、JISではにおいを付けることが出来ず、形状も特定されているが、においや形状の点でJISが付けられないものの、毒性とか、消字力とかそう云うものをしっかり守って、作っている字消工業会のメンバーもおり、安全や性能を証明するために安全管理マークを付けることなった」と説明した。

8. 消しゴムの誤飲事故の可能性について

a)誤飲事故について
使用・消費者側委員よりの「子供の興味を引くような形状で、誤飲して事故になるといったようなことはないのか」との質問に対し、工業会側が「ここ二三年は聞いていません。我々だけが知らないと云う状況もあるかも知れないが、中毒センターとかにそう云う情報が入ると必ず我々のところにいただけます。最近状況はどうでしょうか」との問いかけに関し、使用・消費者側委員より「特にこう云う四角い消しゴムに関して、誤飲事故はほとんどないです。こちらに伺うようになって消しゴムを見る機会が生じ、興味が出てきて市販品を見ますが、いろんな形状のがあって、香りもいろいろありますので、やっぱり誤飲の可能性はあります。消費者庁とかでも今、窒息の方で、ゴムボールとかでもいろいろと問題になったりしています」との現状認識が示され、同時に使用・消費者側委員より「子供の事故情報について、積極的に集めていく方向ですので、そう云う中で、隠れていた事故が上がってくるかも知れないのではないかと思っています」との見解が示された。

次に、工業会側より「過去には、子供が消しゴムを食べたが大丈夫かという問い合わせの電話が掛かって来たことがありましたが、最近はほとんどありません。最近ではどんなものでの誤飲事故があるのでしょうか」の質問に対して、使用・消費者側委員より「今のお子さん達はどちらかと云うと身の回りにあるもの、食品包装用のラップを飲んだとか昔よりは多くなって来ています」との報告があり、更に誤飲による中毒事故として「本当に多い中毒の誤飲事故としては、化粧品、お母さんが使っていると云うことで多い。化粧品、たばこ、文具関係ではクレヨンというのが勿論あるんですけれども、重金属の毒性は低いといったことで、異物として窒息していないかとか、食べられるものではないので、お腹の症状が出るかも知れないとのことで吐いたり、下痢をしたりと云う観点で注意をする必要はあります」と報告があった。

b)誤飲に関する絵文字による注意表示について
工業会側から「昨年、黒木委員よりお話のあった絵文字の件に関して、事務局より報告します。」との発言があり、事務局より「弊社の商品だが、大きな文具の見本市が7月にあって、そこに出す新商品に使うために、今年のはじめに会長が玩具協会に出向き、具体的にどんな方法でやると一番うちのメンバーも含めて効率的に利用させていただけるか協議させていただいた。その結果、個々の会員企業が申請して使わせていただく形となった。とりあえずそれを弊社で実践させていただいた。申請の書類を出したら一週間程度で承諾書を出して貰えると云うことであったが、早々にご対応いただいて、二日目には届いていました。手続きとしましては何も難しいことはなく、今日の先ほどの会でも工業会のメンバーに、手続きは簡単にできるので、どんどん使って下さいと云う話をした。

玩具協会殿もいろいろとマークを玩具だけでなくて、みなさんに認知されて行くということが必要と云うことですので、非常に好意的に我々が使わして貰うことに協力して貰いました。実際の例をメンバーの方にも伝えてありますので、今後そう云う形で広めて行きたいと考えています」と報告があった。
使用・消費者側委員より「玩具の方がとても好意的に対応されたこと、ほんとにうれしいことです。皆様方が作っているのは四角い消しゴムなので、それこそ、誤飲事故は少ないと思うんですけれども、こう云うふうに工夫して貰えることはほんとうにありがたい」また、「小さなお子さまをお持ちの家庭が、玩具を買うと、こう云うマークが付いてきますので、母親側とすると馴染みがあって、その延長で付いているとよくわかると思います」との発言があった。工業会側より「承諾書を貰えば自由に使えますので、どんどん使って下さいと云うことです。おかげさまで、非常に合理的に対応していただきまして、メンバーみんなが使えるようになりました」とのコメントがあった。

9. 本日の審議内容会を含め、
 全体を通しての使用・消費者側委員のご意見、ご感想等

経済産業省の組織の関係で、現在のところは、製造産業局の日用品室と云うことで、もの作りが主体となっておりますが、今度、7月1日から商務情報政策局 日用品室に変わり流通と云うことが主になります。流通の中で、何が主となるかと云うと、経済産業省の中で、最近、輸出振興を図るに際して、どのような支援を行えばよいか、いろいろ考えているところです。字消工業会の会員各社が輸出振興を行うに際して、一社だけではなかなか展示会をするにも経費が掛かると云う場合に、字消工業会として展示会を開こうかと云うようなときに国の方、具体的には中小企業基盤機構と云う独立行政法人があり、国から補助金を出しておりますので、申請をすれば、補助を国から得られると云うような施策もあります。今後、字消工業会の方につきましても、先ほど国内の方も伸び悩んでいると云う事ですので、特に輸出の方でお手伝いもできるかと思いますので、実施してみたいことがありましたら、遠慮なく経産省の方に事情を通知していただき、活用していただければと思います。
私のところでは、規格を担当しており、消費生活製品が中心です。私の個人的な感想になりますが、少しお話があった通り子供の安全性とか、そちらに目を向けた規格作りが必要と感じています。特に去年などは私のところで担当したライター問題があり、子供が容易に使えないようにと配慮しました。子供が興味を引くようなものについては、やはり子供の視点での安全性が重要と考えます。
私としては絵文字の方を進めていただいて本当にありがたいです。
消しゴムってほんとにちっちゃいものなのに、それに大変努力されていると云うことをこの会で知りまして、それは感動ものでしたし、また、こうやって日々努力されていることが、分かってこれからもがんばっていただきたい。また、この絵文字もとてもいいと思います。私も子供がこう云うおもちゃとかを使う年代じゃないので、なじみが全然なくて云われればそうだなと思って見ました。しかも、知っているからたぶん見るんですけれども、ただ手に取っただけではたぶん見ないと思うので、今度はこの絵文字が広く認知されるような取り組みをしていただければ、よりよくなると思いますので、宜しくお願い致します。
地婦連が経済産業省と連携しながら、製品安全セミナーと云うものを全国十何箇所で去年も今年もやっています。身近な製品のその安全性に対する知識の向上を改めて知って行こうと云うことです。一方で、去年たまたま、消費者庁が主催の製品安全セミナーと云うのに、私どもが出させて頂いて、韓国が去年、製品の安全性に関する大きな法律を作られて、安全性に関する全体のレベルを底上げして行こうされていることを知りました。又、ISOの中でも子供の安全に関する規制があります。世界の中で競争している中で、安全性を高めようとする動きが、たぶん今後、重要になってくるんだろうと思いますし、現在、イージーな国でも、また意識が変わって来たり、法律が変わってくると思います。大変な競争の中で、一生懸命こうやってきちっと安全性に向き合って、やっていて下さる皆様方のご努力は今後も続けて頂きたいですし、グローバルな流れとしても、たぶん国内の流れとしても、努力を地道に続けていただくことが報われる形になって行くと信じたいです。消費者としても努力をしていきたいなと思っていますので、宜しくお願い致します。

10. 工業会会長のことば

時間も来たようでございますので、今日はこの辺で終わらせていただきたいと思います。28年間こうしてやって参りまして、その成果が皆様のご指導のお陰で、少しずつ出てきたかなと思っています。我々、情報不足なところが結構ありまして、今日みなさんにお話ししたのも、もしかしたら最新情報でないかも知れません。もしそれが分かりましたら、すぐにご連絡しようと思いますが、消しゴムの毒性に関係するものについては、最新の情報だと思っています。世界の状況は常に変化し、追加される新たな規制は日本バッシングだというように感じることがないこともありません。日本の貿易がもし復活して来ると、またいろんな規制が増えるのでしょう。来年こうしてお会いできて、お話しするときまでは、急に規制が強くなっていると云うことはないと思いますが、大きく変わったときはご連絡申し上げます。そんなことで、これからも一生懸命がんばって参りたいと思いますので、どうぞひとつよろしくご指導をいただけますようお願い申し上げます。今日は本当にありがとうございました。
以上
出席委員名簿

委 員
宮 村 康 夫
名 和 小夜子
伊 敷 万太郎
黒 木 由美子
赤 井 尉 浩
若 月 壽 子
浅 野 幸 子
西 岡 靖 博
山 崎 理 右
生 沼 秀 樹
矢 島 泰 行
山 崎 安 男
伊 藤 忠 彰
辻 尾 伸 二
吉 住 公 一


経済産業省 製造産業局 日用品室
経済産業省 製造産業局 日用品室
経済産業省 環境生活標準化推進室
財団法人 日本中毒情報センター
財団法人 日本文化用品安全試験所
主婦連合会
全国地域婦人団体連絡協議会
日本字消工業会会長(株式会社シード)
有限会社アミン
ヒノデワシ株式会社
株式会社ヤジマ
株式会社ヤマヤス
ラビット株式会社
ラビット株式会社
ぺんてる株式会社

事 務 局
新 谷 全 利

株式会社シード
(順不同・敬称略)
審議会委員のご紹介
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